学術論文を書くなら Word と LaTeX のどちらがよい?
数式が多い論文、規模の大きい参考文献一覧、IEEE や ACM などの指定テンプレートには LaTeX が有力です。文章中心の初稿を変更履歴付きで細かく添削してもらうなら Word が便利です。併用もできますが、変換後の確認が必要です。
判断材料は数式の密度、参考文献の管理、誰が読むか、どこに提出するかです。
数式・参考文献・番号・添削を比較する
| 項目 | Word | LaTeX |
|---|---|---|
| 数式入力 | 数式エディターで \frac{a}{b} などの LaTeX 入力ができる | 数式モード、複数行の整列、独自の記号を扱いやすい |
| 参考文献 | 標準機能や文献管理アドインで引用を生成・更新できる | BibTeX や biblatex でデータベースから生成。並び順はスタイルによる |
| 番号と相互参照 | フィールドと相互参照で自動化できる。手入力の番号は管理が必要 | \label・\ref・\eqref をコンパイル時に更新 |
| 共同での添削 | 変更履歴とコメントを使いやすい | PDF、変換した文書、オンライン共同編集などで確認する |
終盤で差が出やすいのは引用と番号です。何度も挿入・削除すると、手入力の番号には抜けが生じやすくなります。
2つの誤解
LaTeX なら必ず美しくなる。 見た目はテンプレート次第です。不適切なクラスなら行間・文字サイズ・図表の配置にも問題が出ます。強みは構造の一貫性で、図を追加しても番号と参照を更新できます。目次や参照のための繰り返し処理は EasyLaTeX が管理します。
Word は複雑な数式を書けない。 Microsoft 365 の数式エディターは LaTeX 形式の入力に対応します。数式の数だけが境界ではありません。番号と参照の設定・更新の仕方が重要で、Word でもフィールドを正しく設定して更新すれば自動化できます。
数式番号と引用を結び付ける例
次の完全なソースでは、数式番号・本文の参照・参考文献項目を結び付けています。
\documentclass[11pt]{article}
\usepackage{amsmath}
\begin{document}
\section{Method}
We study the objective in Equation~\eqref{eq:obj}.
For background on typesetting, see~\cite{knuth1984}.
\begin{equation}\label{eq:obj}
J(\theta)=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}\ell(f(x_i;\theta),y_i).
\end{equation}
\begin{thebibliography}{9}
\bibitem{knuth1984} Donald E. Knuth. \emph{The TeXbook}. Addison-Wesley, 1984.
\end{thebibliography}
\end{document}
\section{Method} の後に数式を追加すると、番号が調整されます。\eqref{eq:obj} は手書きの番号ではなくラベルを参照します。コンパイルの全処理を待って確認してください。Word で対応する運用をする場合は、必要に応じて F9 などで設定済みのフィールドを更新します。
選び方と併用時の注意
- 何度も増減するか。 数式と参考文献が多く、順序も変わるなら自動管理の価値が高くなります。
- 誰が添削するか。 指導教員が Word の変更履歴を使うなら、初稿を Word で作り、構成が固まってから LaTeX に移す方法もあります。
- 提出形式は何か。 指定されたクラスを使う場合は LaTeX が自然です。Word が必要な場合は、余分な変換を挟む利点を考えます。
LaTeX 原稿を Word に変換して渡す方法もあります。数式・表・引用・書式を確認し、往復変換を繰り返さないよう早めに運用を決めましょう。
既存の .tex プロジェクトを試すなら、EasyLaTeXに取り込んでブラウザーでコンパイルできます。